コラム

改正酒税法が影響を与えたビール類の購買行動 株式会社ショッパーインサイト 主任コンサルタント 矢野尚幸

改正酒税法が影響を与えたビール類の購買行動 株式会社ショッパーインサイト 主任コンサルタント 矢野尚幸

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 2016年5月に成立した改正酒税法と同酒類業組合法が、2017年6月1日より施行されました。これにより、ビール類の店頭価格が軒並み値上がりしていることが報じられました※1。あれから1カ月強が経ちましたが、その後どのような影響があったのでしょうか?rsSMデータを用いて分析しました。

 施行前と後ではどの程度平均売価が上昇したのでしょうか。5月と6月における、主要ビール、発泡酒、新ジャンルの350ml×6の平均売価を比較しました(図表1)。すると、どのカテゴリーも前月に比べて約10%上昇しました。法施行により安売りが抑制されたようです。

図表1350ml×6の平均売価(税込)

※ビール350ml×6…スーパードライ、一番搾り、黒ラベル、ザ・モルツの合算

 発泡酒350ml×6…淡麗極上、淡麗グリーンラベル、スタイルフリー、極ZEROの合算

 新ジャンル350ml×6…のどごし生、金麦、クリアアサヒ、麦とホップThe goldの合算

 そのため、各カテゴリー全体でも販売金額が減少しました。図表2は2017年5月と6月におけるカテゴリー別の販売金額PIを集計したものです。5月は駆け込み需要が見られたこともあり、ビールと新ジャンルは対前月に比べて10%以上減少しました。対前年同月で比較しても、前年同期に比べて新ジャンルは5%以上減少しました(図表3)。

図表2カテゴリー別販売金額PI(施行前後月)
図表3カテゴリー別販売金額PI(施行前年同月)

 安売り抑制により、ビール、発泡酒、新ジャンルにおいて前月、前年同月に比べて販売金額が減少しましたが、性年齢によって買い控えた割合に差があるのでしょうか。2017年5月と6月のカテゴリー別の出現率(=期間中来店者のうち1度でも当該商品を購入した人の割合)を性年齢別に集計し、比較しました(図表4)。
 すると、ほぼ全体でどの世代も出現率が減少しましたが、ビールは特に高年代層の減少幅が大きいです。一方、新ジャンルはビールより若い30代から70代の減少幅が大きいです。年代によって買わなくなったカテゴリーに、若干差があるようです。

図表4性年齢別出現率

 それでは、6月に入ってビール類の購買が抑制されたことで、他の酒類カテゴリーに影響はあったのでしょうか。スイッチ分析※2を用いて、カテゴリー間の流出入の差を抽出しました(図表5)。
 ビールは各カテゴリーへ流出が見られますが、特に発泡酒、ウィスキー、焼酎乙類、焼酎甲類への流出が大きいです。しかし、新ジャンルにはほとんど流出しませんでした。
 発泡酒はビールからの流入が見られたものの、新ジャンルへの流出が見られました。
 新ジャンルは、発泡酒からの流入が見られたものの、焼酎甲類やチューハイ・カクテルへの流出が見られました。

図表5酒類カテゴリー間スイッチ分析(購入者100人当たり流出入差)(単位:円)

※2017年5月から2017年6月の流出入差を集計。輸入ワインも分析対象にしたが、ほとんど流出入が見られなかったため割愛。

 6月から安売りが抑制されたことにより、ビール、発泡酒、新ジャンルは販売金額が前月、前年同月に比べて大きく減少しました。しかし、購買しなくなった性年齢やスイッチしたアルコールカテゴリーはそれぞれ違いがありました。需要減少は一時的なものなのか、それとも今後も継続するのかを今後も見守る必要がありそうです。

  • ※1 日本経済新聞 2017年6月1日
  • ※2 分析対象カテゴリー購入者のカテゴリースイッチ状況を購入量(今回は金額)で測定する分析です。rsSMにも搭載されています。

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