コラム

改正酒税法が影響を与えたビール類の購買行動 株式会社ショッパーインサイト 主任コンサルタント 矢野尚幸

改正酒税法が影響を与えたビール類の購買行動 株式会社ショッパーインサイト 主任コンサルタント 矢野尚幸

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 5月頃より、寄生虫アニサキスによる食中毒の報道が見られました。アニサキスは寄生虫の一種で、刺身などを生で食べた場合はみぞおちなどの激しい痛みや腹膜炎症状を引き起こします※1。これにより、刺身類の買い控えなどが見られたようですが、実際にどのような購買行動がとられたのでしょうか。rsSMデータを用いて分析しました。

 最初に水産カテゴリーの動向がどのように変動したのか、5月から7月までの月別金額PIを集計し、前年同期と比較しました(図表1、図表2)。塩干加工品はほぼ前年並みですが、刺身類や鮮魚は大きく前年を下回りました。7月に入っても回復の兆しは見られません。

図表1水産カテゴリー月別トレンド
図表2水産カテゴリー月別トレンド(対前年比)

 刺身類全体では減少傾向が見られていますが、刺身も種類によって増減に違いはあるのでしょうか。そこで、2017年7月の刺身カテゴリー別の金額PIを集計し、2015年7月、2016年7月と比較しました(図表3)。すると、本まぐろ刺身、ぶり・はまち刺身などは対2015年、対2016年と比較して金額PIが増加しましたが、まぐろ冊、しめさば、あじたたきなどは大きく減少しました。 カテゴリーによっても購入を避けられているもの、避けられていないものが分かれるようです。

図表3刺身カテゴリー別金額PI

 それでは購入を控えた人々は、どのカテゴリーにスイッチしたのでしょうか。スイッチ分析※2を用いて、前年同月からのカテゴリー間の流出入差を抽出しました(図表4)。
 刺身類は野菜を除いた畜産、水産、惣菜カテゴリーへ流出していることがわかります。特に豚肉、惣菜、弁当カテゴリーへの流出が大きいです。刺身の購買を控えると、簡便志向の購買者は惣菜へスイッチすることが伺えます。

図表4カテゴリー間スイッチ分析 購入者100人当たり流出入差

(関東エリア全体 単位:円)

※2016年7月から2017年7月の流出入差を集計。

 男性に限定するとさらに流出度合いが大きく、弁当への流出入差が広がりました(図表5)。

図表5カテゴリー間スイッチ分析 購入者100人当たり流出入差

(関東エリア男性 単位:円)

※2016年7月から2017年7月の流出入差を集計。

 8月を過ぎても状況があまり変わらないことから、刺身需要の回復にはしばらく時間がかかりそうです。その場合食品SMの来店者は簡便志向を満たす食材を好むため、店舗での取り揃えが重要になりそうです。

  • ※1 日本経済新聞 2017年5月12日
  • ※2 分析対象カテゴリー購入者のカテゴリースイッチ状況を購入量(今回は金額)で測定する分析です。rsSMにも搭載されています。

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