コラム

輸入牛肉の購買行動から将来の影響を探る 株式会社ショッパーインサイト 主任コンサルタント 矢野尚幸

輸入牛肉の購買行動から将来の影響を探る 株式会社ショッパーインサイト 主任コンサルタント 矢野尚幸

本記事のPDFファイルをダウンロードする

 2015年10月5日、環太平洋経済連携協定(TPP)は大筋合意に至りました。この協定により、輸入牛肉や豚肉は関税が削減される見通しとなっています。私たちの食品スーパーでの購買行動にも大きな影響を及ぼすでしょう。今回のコラムでは、現状の輸入牛肉の購買行動を見ることで、将来的にどのような影響があるか考えます。

 そもそも、現状はどのように購入されているのでしょうか。ショッパーインサイト社real shopper SMでは、牛肉を和牛、国産牛、米国産牛、豪州産牛など産地別にカテゴリー分類しています※1。牛肉のうち、和牛、国産牛、米国産牛、豪州産牛の販売状況(金額PI)を集計したのが図表1です。

図表1:

※数値は税抜き

 2013年9月、2014年9月、2015年9月で比較すると、全体では年々金額PIが増加傾向にあります。産地別でも米国産牛は減少傾向にあるものの、和牛、国産牛、豪州産牛は増加しています。
 世代別ではどうでしょうか。ここでは30-40代女性に限定して、上記と同じ分析を行いました(図表2)。

図表2:

 すると、和牛、国産牛は微増ですが、豪州産牛が大きく増加していることがわかります。全体同様米国産牛は減少していますが、それを補う以上に豪州産牛が購入されています。現在高い関税がかかっていても、和牛よりも割安な価格の豪州産牛が購入されており、輸入牛肉への需要は高いようです。
 2015年9月に30-40代女性で豪州産牛肉を購入した人は一人当たり1.34回、約885円購入しています。関税が削減されると、購入頻度の増加が期待できます。もしくは、和牛や国産牛から輸入牛へのスイッチが見込まれます。2015年9月に30-40代女性来店者のうち、6.5%の人が豪州産牛を購入しましたが、この割合の増加が期待できます。

 輸入牛肉の購買頻度が増えると、それを用いた料理の頻度が増加しますが、どのような調理がされているのでしょうか。今回は、豪州産牛肉の中でも切り落とし肉購入時の各調味料との同時併買分析を行うことで、どのような調理が行われているのか推測しました。また、和牛切り落とし肉と各調味料の同時併買分析と比較することで、その特徴を明らかにしました(図表3)。

図表3:

※リフト値=同時併買÷単独購買率

 すると、豪州産切り落とし購入時には、カレールー、シチュールーや中華加工調味料との同時併買率が、和牛切り落とし購入時よりも高いです。カレーやシチュー、中華料理を作る際には、豪州産の切り落としが購入される傾向にあるようです。一方、和牛切り落とし肉を購入する際には、焼肉のたれや鍋つゆとの同時併買率が高いです。焼肉やしゃぶしゃぶ、鍋ものを作る際には、和牛の切り落としが購入される傾向にあるようです。

 今後豪州産牛の購買頻度が増加すると、カレールー等の購入頻度も高くなる可能性があり、これらの調味料にとってもチャンス到来といえるでしょう。今後、関税が削減された際の動向は、引き続きご紹介したいと思います。

  • ※1 牛肉カテゴリーは他に通常牛、輸入牛(米国、豪州以外)などの分類があります。さらに和牛はブロック、うす切り、切り落とし、しゃぶしゃぶ用などまで細かな分類が可能です。

本記事のPDFファイルをダウンロードする

ページトップへ