コラム

酒税法改正によるアルコール購買行動の変化

酒税法改正によるアルコール購買行動の変化

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 2020年10月より酒税法の改正が段階的に始まりました。ビールや清酒などの酒税が従来よりも低くなり、新ジャンルやワインなどは高くなります。これに伴い、食品スーパーでのアルコールの購買行動にも変化が起きることが考えられます。そこで、rsSMデータを用いて、来店者のアルコール購買行動を分析しました。尚、前年は消費増税間近によりアルコールの購買に大きな変化が見られたため、今回は前々年同週との比較を行いました。また、関東エリアに限定して分析しました。
 最初に、主要アルコールカテゴリーの週別点数PIを集計し、前々年同週と比較しました。図表1はビール類の結果です。

図表1ビール類前々年比
ビール類前々年比

 すると、新ジャンルは9月10日週より前々年比110%以上となり、駆け込み需要があったことが伺えます。その後、10月1日週より前々年比80%未満となりました。一方、ビールは、9月17日週までは前々年並み、24⽇週は買い控えがあったのか前々年⽐89.4%でしたが、10月1日週以降前々年比110%以上となりました。
 図表2は、主要アルコールカテゴリーの結果です。

図表2主要アルコールカテゴリー前々年比
主要アルコールカテゴリー前々年比

 すると、新ジャンル同様、税率に変更のある輸⼊ワインは9⽉24⽇週に前々年⽐141.7%となり、10月1日週には75.7%となりました。やはり駆け込み需要が見られました。税率が低くなる清酒は、10月1日週は前々年を下回りましたが、10月8日週は前々年比114.3%となりました。チューハイ・カクテルや、焼酎乙類に関しては、好調に推移しました。
 これまで低価格志向の需要を獲得していた新ジャンルカテゴリーですが、税率変更の影響を大きく受けているようです。増税前に駆け込む一方、一定層は他のカテゴリーにスイッチしている可能性があります。そこで、税率変更前2週間に新ジャンルを購買していた人が、どのカテゴリーへスイッチしたのか、ブランドスイッチ分析を行いました(図表3)。

図表3酒類カテゴリーの流出入差(100人当たり金額:関東エリア)
酒類カテゴリーの流出入差(100人当たり金額:関東エリア)

第1期:2020年9月17日~30日 第2期:2020年10月1日~14日

 すると、今回分析したアルコールカテゴリーのいずれにも流出していることが確認できますが、特に税率が低下するビールや清酒、また価格が割安なチューハイ・カクテルへの流出金額が大きくなっています。やはり税率の変更によるショッパーの購買行動には影響が見られます。
 もう少し、ビールと新ジャンルの関係を見ていきましょう。まず、2020年8月に関東エリアで、一定金額ビールと新ジャンルを購買したショッパーのビールロイヤルティを集計しました。ビールと新ジャンル(他の酒類は対象外)の金額のうち、70%以上ビールを購買した人を「高ロイヤル」、50%以上70%未満を「中ロイヤル」、30%以上50%未満を「低ロイヤル」と名付け、そのグループ別の購買行動を集計しました。
 たとえば、期間中5,000円、ビールまたは新ジャンルを購買した人のうち

 それでは、上記グループごとの、税率変更前後のビールと新ジャンルの点数PIを集計しました。図表4は、ビール高ロイヤルのビール、新ジャンルの点数PIです。

図表4ビール高ロイヤル 週別点数PI
ビール高ロイヤル 週別点数PI

 ビール高ロイヤル者は、ビールと新ジャンルの場合、元々大部分はビールを購買するため、税率変更の影響はそれほど大きく受けていません。9月24日週に、ビールの点数PIは減少したものの、10月1日週以降戻っており、また新ジャンルに関しても9月24日週は若干増加したものの、10月1日週以降は例年並みとなりました。

図表5ビール低ロイヤル 週別点数PI
ビール低ロイヤル 週別点数PI

 図表5はビール低ロイヤルの点数PIです。大部分は新ジャンルを購買しており、ビールは時々購買しているショッパーです。こちらは、10月1日週に新ジャンルの点数PIが大きく減少し、逆にビールのPI値が増加しました。駆け込み需要の影響もあり、判断をするには時期尚早ですが、以前よりもビールの頻度を増やすショッパーも一定層いるようです。

図表6ビール中ロイヤル 週別点数PI
ビール中ロイヤル 週別点数PI

 一番変化が見られたのは、中ロイヤルのショッパーです。全購入金額の50%以上がビール、50%未満が新ジャンルとほぼ半々で購買しているため、それぞれお気に入りのブランドがあるショッパーなどが、例として挙げられます。図表6は、ビール中ロイヤルの点数PIです。すると、10月1日週を機に、ビールと新ジャンルの点数PIが逆転しました。低ロイヤルのショッパー同様、一定層ビールの購買頻度を高める動きが見られるようです。
 また、このような購買行動の変化は、他のカテゴリーにも影響を及ぼす可能性があります。図表7は、ビール中ロイヤルのショッパーが、同時に購買するチーズカテゴリーの併買率を税率変更前後で比較したものです。

図表7ビールバスケット併買(関東:ビール中ロイヤル)
ビールバスケット併買(関東:ビール中ロイヤル)

 すると、ビールを購買する際のプロセスチーズとの同時併買率は5.6%だったのが、変更後には6.7%に増加しました。一方、ナチュラルチーズは4.7%から3.1%に減少しました。2週間での動向のため、仮説の域は超えませんが、税率が変更したとはいえ、新ジャンルよりも価格の高いビールの購買頻度を高めるため、おつまみは割安なものにしようという意識が働いたのかもしれません。
 このように、アルコールの購買行動の変化は、他のカテゴリーにも影響するため、注目しておく必要があるでしょう。

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