(2)ショッパーを意識したマーケティングの必要性

 ショッパーを意識したマーケティングの必要性が高まった背景には、消費者の変化が進んでいることがあげられます。消費者の変化としては、図表 2のようなことがあげられます。

寺本(2011)を加筆修正

1 高齢化

 これまでのスーパーマーケットは主にファミリー層を対象としていました。そのため、POS分析で大勢をつかんでマーケティング施策を行ってきました。しかし、今後は年代構成比が大きく変化していきます。図表 3は、国立社会保障・人口問題研究所による年齢構造推計ですが、既に65歳以上が20%以上を占めており、2025年には30%を突破することが予測されています。このような状況の中、従来通りファミリー層を想定した売場づくりでは、彼らのニーズに対応できないといえます。

出所:国立社会保障・人口問題研究所

2 単独世帯化

 今後変化するのは年齢構造だけではありません。図表 4は、国立社会保障・人口問題研究所による世帯数の推移推計です。2010年の時点で既に単独世帯が最も大きな構成比となっています。従来のファミリー層の世帯数は減少傾向を示しているのに対して、単独世帯は2020年までは増加することが推定されています。しかし、2020年以降は世帯数も減少へ向かいます。

出所:国立社会保障・人口問題研究所

3 パーソナルユース化

 単独世帯の増加に伴い、食品スーパーでも小分け商品、使い切り商品の需要が高まっています。大勢で食事をする際に用いることが多かったと思われる鍋つゆカテゴリーにおいても、使い切り用の商品が各社から販売されています。

4 購買者と使用者のギャップ

 商品の中には、実際にその商品を購買する人と、その商品を使用する人が異なる場合があります。特に食品では、主婦が世帯の購買を代表して行うことが多いため、使用者と購買者のギャップが大きくなります。

 図表 5は、ビールカテゴリーと炭酸飲料カテゴリーの購買者属性を示したものです。40代~50代の女性が購買の中心になっていますが、おそらく実際の飲用は、ビールなら男性、炭酸飲料なら若年層の割合が高まるでしょう。ビールや炭酸飲料の購買者と使用者にはギャップがあるといえます。

 そのため、飲用者に向けたマーケティングを展開するだけではなく、ショッパーに向けては、購買時点でのマーケティング施策を講じることで、購買を促進する必要があります。

データ出所:株式会社ショッパーインサイトrsSMデータ(2013年7月~9月)

(3)従来のマーケティングからの変化

 消費者の変化が進んでいる例をいくつかあげましたが、さらにID-POSデータが普及し、個々のショッパーの購買動向が把握できるようになると、従来のマーケティングからの変化が求められます。具体例をあげて説明します。

1 市場の縮小に向けた対応の必要性

 今後高齢化が進み、単独世帯が増加すると、従来通りの展開では難しくなるでしょう。 中村(2006)によると、上位20~30%の顧客で売上&利益の70~80%を占めるので、企業の業績に及ぼす影響が大きいので維持すべきとされています(図表 6)。商圏内の見込み客にトライアルを促すだけではなく、上位顧客に支持し続けてもらうための売場づくりが必要になります。

出所:中村(2006)

2 小売業のID-POSデータ活用の模索

 日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、新日本スーパーマーケット協会(2013)のアンケート調査によると、 調査に回答した会員企業223社のうち、77.1%はポイントカードを導入しており、そのうち48.2%(全体の36.3%)はID-POS分析を実施しています。分析内容は、商圏、顧客属性が上位になっています。小売業においてもID-POS分析が進んでいることから、今後メーカーや卸売業にも分析を依頼するケースは増えるものと思われます。

(4)ID-POSデータを用いてショッパーを理解する

 前述したように、ID-POSデータは「誰が」を理解することのできるデータです。ショッパーの理解することができるため、年代別の分析や優良顧客の分析等も可能です。しかし、具体的にどのように用いて分析すればよいのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。そこで次回以降はID-POSデータの特徴や活用事例、実際の活用方法を明らかにします。

参考文献
  • 寺本高「なぜショッパーを捉える必要があるのか」,『ショッパー・マーケティング』,日本経済新聞出版社,2011,p46-58
  • 中村博「小売業の顧客データを活用したメーカーと小売業のコラボレーション」,『流通情報』No.447,2006,pp19-31
  • 日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、新日本スーパーマーケット協会「平成25年スーパーマーケット年次統計調査報告書」2013年

監修

寺本 高(てらもとたかし)

横浜国立大学 大学院国際社会科学研究院 准教授

プロフィール

筑波大学博士(経営学)。マーケティング論専攻。1973年横浜市生まれ。
1998年慶應義塾大学商学部卒業後、(財)流通経済研究所・主任研究員 店頭研究開発室長、明星大学経営学部准教授を経て、2016年より現職。消費者行動論、市場分析論などを講じる。2013年日本商業学会賞(奨励賞)を受賞。

主な著作

  • ・『小売視点のブランド・コミュニケーション』千倉書房(日本商業学会賞受賞図書)
  • ・『ショッパー・マーケティング』 共編著・日本経済新聞出版社
  • ・『インストア・マーチャンダイジング 製配販コラボレーションによる売場作り』共編著・日本経済新 聞出版社など多数。